2021年02月12日 (金) | 編集 |
皆さんこんにちは!
LiSA三年の赤塚です。
今年度は大学に来る機会がぐっと減り、「図書館に長らく足を運んでいない」という方も多いのではないでしょうか。
こういった状況下でもなるべく学習や研究を進められるよう、お茶大図書館では電子ブックのサービスがあります☀️
すでにこのブログでも何度か紹介されていますね!
先日そちらを利用し、自分の専攻である哲学分野から新しい本を三冊リクエストしたところ、なんと!購入していただきました✨
『芸術とその対象』(リチャード・ウォルハイム 著, 松尾大 訳, 慶應大学出版会)
『批評について —芸術批評の哲学—』(ノエル・キャロル 著, 森功次 訳, 勁草書房)
『「見える」を問い直す』(柿田秀樹・若森栄樹 編, 彩流社)
(私の関心を如実に表すラインナップですね……)
今回の記事では以上の三冊をご紹介しつつ電子ブック利用の感想なども併せてお伝えしたいと思います。
■『芸術とその対象』(リチャード・ウォルハイム 著, 松尾大 訳, 慶應大学出版会)
「芸術とは何か」とは、それ自体としてはシンプルな問いでも答えることは非常に難しい問題です。
絵画や彫刻などの「物」そのものがそのまま芸術なのでしょうか。
ですが詩や音楽といった「物」を持たない芸術も存在します。
とすると芸術は「物」としての何かではない、ということに……。
それでは芸術作品とは、私たちそれぞれの心の中にのみ存在するイメージなのでしょうか?
そうだとすると、その芸術作品を実際に形作っている材料(色や音など)は実際のところ何でもいいということになってしまいます。
それは少し受け入れがたい主張ですよね……。
かと言って、見たり聴いたりして感じ取れる要素だけが「芸術作品」を構成しているのでもありません。
作品の中に明確に表現されていないことを行間から読み取る場合も多いのではないでしょうか。
このように考えるとますます「芸術って何だ……?」となってしまいます🤔
この本はこういったことについて、疑問点を一つ一つ着実に整理し解消していきます。
(個人的には、節ごとの概要が冒頭にまとまっており気になる箇所をピンポイントに探せる点がつまみ食いを許してくれている感じがして嬉しいです☺️)
本書の序文では、「芸術とは何か」という問いがたどり着く帰結は美学だけでなく心の哲学、価値理論、社会哲学にとっても重要であると述べられています。
自分の関心に沿った部分を拾って読むだけでも、さまざまな角度からの考察に耐えうる「芸術」という存在の奥深さを味わえるのではないでしょうか。
■『批評について —芸術批評の哲学—』(ノエル・キャロル 著, 森功次 訳, 勁草書房)
何かを買う時、皆さんはレビューをどの程度参考にしますか?
「いつも口コミを見て判断する」「有名な批評家の方の意見は参考にする」など、批評との付き合い方は人によってさまざまかと思います。
しかし、次から次に新たな作品が生み出される現代においては、少なからず批評を頼りに見るべきものを探している部分があるのではないでしょうか。
だとすれば、批評について考えることは現代に生きる私たち全員に関係のあるテーマと言えるかもしれません。
「何をどう感じるかは人によるのでは?」という疑問は素朴ですが、実はかなり根源的でもあります。
本書はこれを「批評に対する批判」と捉え、第一章から第三章で批評の本質やその対象を吟味した後、最終章である第四章を丸々使ってこの問いに答えています💪
本書の個人的なおすすめポイントは、まず言葉遣いが日常的な点。
専門用語が並んでいる!という感じではないため、飽くまで自分の実感と照らし合わせて理解し読み進めることができる内容だと思います。
また実際の批評から例をひいて論じる部分も多く、現実から乖離しない「批評」観を打ち立てようという姿勢が一貫してうかがえます。
数ある芸術作品の中から「これは!」と思うものを見つけ出すにあたって大きな役割を果たす批評。
本書を通じてこの「批評」という行為そのものに対する理解を深めてみるのも楽しいかもしれません🙌
■『「見える」を問い直す』(柿田秀樹・若森栄樹 編, 彩流社)
本書全体を貫いているのは、
「何が人に〈見える〉という経験を確信させるのだろう」
という問題意識です。
見ているものが客観的に存在するから見えているのでしょうか。
しかし、同じ作品を見る場合でも背景知識を知っていると知らないとでは見え方が変わる場合があります。
パロディーなどは元ネタを知っていることで初めて適切に〈見る〉ことができますよね。
そうなると、今〈見えている〉ものは客観的に存在するものなのではなく、一定の見方がそう〈見る〉ことを可能にしている、そんな〈見え方〉なのではないでしょうか。
このように〈見ること〉を根本から捉え直すことで視覚文化の歴史や今後の展望について考察したのが本書です。
獨協大学にて行われたシンポジウムをまとめた内容となっており、美術作品からテレビゲームやミラーレスカメラなど、題材は多岐に渡ります😳
抽象的な論を追うのが難しい部分もあるものの、シンポジウムの内容を本にしているので基本的にはすべて話し言葉で書かれており、具体的な作品に即して話が進んでいくため、比較的とっつきやすいように思います!
〈見える〉ことの自明性を問い直し「当たり前」を揺るがすスリリングな試みをあなたも覗いてみませんか?
ここまで読んでいただきありがとうございました……!
リクエスト本の紹介が長くなりましたが、最後に電子ブックサービスの感想を簡単にお伝えしたいと思います。
実は私、お茶大図書館の電子ブックはおろか電子書籍そのものの利用が初めてでした💧
(紙をめくる感じが好きだとかの理由がいろいろあったのですが……)
しかし、今回使ってみて便利さを実感しました。
単語検索機能があるので「あの記述どこだったっけ……」と探す場合も手間取ることがなく、目次を傍らに表示しながら読めるので自分が今本のどこを読んでいるかを確認しつつ読むこともできます。(非表示にもできます!)
表示方法も見開きか1ページずつかを選ぶことができ、PCからもスマートフォンからも読みやすい印象でした。
「学外からも電子ブックは利用できるので、読みたい本はあるんだけど図書館に行く機会がない」という方は、どこでも気軽に読める電子ブックをぜひ利用してみてください!
LiSA赤塚
LiSA三年の赤塚です。
今年度は大学に来る機会がぐっと減り、「図書館に長らく足を運んでいない」という方も多いのではないでしょうか。
こういった状況下でもなるべく学習や研究を進められるよう、お茶大図書館では電子ブックのサービスがあります☀️
すでにこのブログでも何度か紹介されていますね!
先日そちらを利用し、自分の専攻である哲学分野から新しい本を三冊リクエストしたところ、なんと!購入していただきました✨
『芸術とその対象』(リチャード・ウォルハイム 著, 松尾大 訳, 慶應大学出版会)
『批評について —芸術批評の哲学—』(ノエル・キャロル 著, 森功次 訳, 勁草書房)
『「見える」を問い直す』(柿田秀樹・若森栄樹 編, 彩流社)
(私の関心を如実に表すラインナップですね……)
今回の記事では以上の三冊をご紹介しつつ電子ブック利用の感想なども併せてお伝えしたいと思います。
■『芸術とその対象』(リチャード・ウォルハイム 著, 松尾大 訳, 慶應大学出版会)
「芸術とは何か」とは、それ自体としてはシンプルな問いでも答えることは非常に難しい問題です。
絵画や彫刻などの「物」そのものがそのまま芸術なのでしょうか。
ですが詩や音楽といった「物」を持たない芸術も存在します。
とすると芸術は「物」としての何かではない、ということに……。
それでは芸術作品とは、私たちそれぞれの心の中にのみ存在するイメージなのでしょうか?
そうだとすると、その芸術作品を実際に形作っている材料(色や音など)は実際のところ何でもいいということになってしまいます。
それは少し受け入れがたい主張ですよね……。
かと言って、見たり聴いたりして感じ取れる要素だけが「芸術作品」を構成しているのでもありません。
作品の中に明確に表現されていないことを行間から読み取る場合も多いのではないでしょうか。
このように考えるとますます「芸術って何だ……?」となってしまいます🤔
この本はこういったことについて、疑問点を一つ一つ着実に整理し解消していきます。
(個人的には、節ごとの概要が冒頭にまとまっており気になる箇所をピンポイントに探せる点がつまみ食いを許してくれている感じがして嬉しいです☺️)
本書の序文では、「芸術とは何か」という問いがたどり着く帰結は美学だけでなく心の哲学、価値理論、社会哲学にとっても重要であると述べられています。
自分の関心に沿った部分を拾って読むだけでも、さまざまな角度からの考察に耐えうる「芸術」という存在の奥深さを味わえるのではないでしょうか。
■『批評について —芸術批評の哲学—』(ノエル・キャロル 著, 森功次 訳, 勁草書房)
何かを買う時、皆さんはレビューをどの程度参考にしますか?
「いつも口コミを見て判断する」「有名な批評家の方の意見は参考にする」など、批評との付き合い方は人によってさまざまかと思います。
しかし、次から次に新たな作品が生み出される現代においては、少なからず批評を頼りに見るべきものを探している部分があるのではないでしょうか。
だとすれば、批評について考えることは現代に生きる私たち全員に関係のあるテーマと言えるかもしれません。
「何をどう感じるかは人によるのでは?」という疑問は素朴ですが、実はかなり根源的でもあります。
本書はこれを「批評に対する批判」と捉え、第一章から第三章で批評の本質やその対象を吟味した後、最終章である第四章を丸々使ってこの問いに答えています💪
本書の個人的なおすすめポイントは、まず言葉遣いが日常的な点。
専門用語が並んでいる!という感じではないため、飽くまで自分の実感と照らし合わせて理解し読み進めることができる内容だと思います。
また実際の批評から例をひいて論じる部分も多く、現実から乖離しない「批評」観を打ち立てようという姿勢が一貫してうかがえます。
数ある芸術作品の中から「これは!」と思うものを見つけ出すにあたって大きな役割を果たす批評。
本書を通じてこの「批評」という行為そのものに対する理解を深めてみるのも楽しいかもしれません🙌
■『「見える」を問い直す』(柿田秀樹・若森栄樹 編, 彩流社)
本書全体を貫いているのは、
「何が人に〈見える〉という経験を確信させるのだろう」
という問題意識です。
見ているものが客観的に存在するから見えているのでしょうか。
しかし、同じ作品を見る場合でも背景知識を知っていると知らないとでは見え方が変わる場合があります。
パロディーなどは元ネタを知っていることで初めて適切に〈見る〉ことができますよね。
そうなると、今〈見えている〉ものは客観的に存在するものなのではなく、一定の見方がそう〈見る〉ことを可能にしている、そんな〈見え方〉なのではないでしょうか。
このように〈見ること〉を根本から捉え直すことで視覚文化の歴史や今後の展望について考察したのが本書です。
獨協大学にて行われたシンポジウムをまとめた内容となっており、美術作品からテレビゲームやミラーレスカメラなど、題材は多岐に渡ります😳
抽象的な論を追うのが難しい部分もあるものの、シンポジウムの内容を本にしているので基本的にはすべて話し言葉で書かれており、具体的な作品に即して話が進んでいくため、比較的とっつきやすいように思います!
〈見える〉ことの自明性を問い直し「当たり前」を揺るがすスリリングな試みをあなたも覗いてみませんか?
ここまで読んでいただきありがとうございました……!
リクエスト本の紹介が長くなりましたが、最後に電子ブックサービスの感想を簡単にお伝えしたいと思います。
実は私、お茶大図書館の電子ブックはおろか電子書籍そのものの利用が初めてでした💧
(紙をめくる感じが好きだとかの理由がいろいろあったのですが……)
しかし、今回使ってみて便利さを実感しました。
単語検索機能があるので「あの記述どこだったっけ……」と探す場合も手間取ることがなく、目次を傍らに表示しながら読めるので自分が今本のどこを読んでいるかを確認しつつ読むこともできます。(非表示にもできます!)
表示方法も見開きか1ページずつかを選ぶことができ、PCからもスマートフォンからも読みやすい印象でした。
「学外からも電子ブックは利用できるので、読みたい本はあるんだけど図書館に行く機会がない」という方は、どこでも気軽に読める電子ブックをぜひ利用してみてください!
LiSA赤塚
この記事へのコメント
PCだけでなくスマホやタブレットでも読めるのはいいですね。それぞれの本をちゃんと読み込んだうえで記事をお書きになっているのは素晴らしいと思いましたが、同時に読むことが苦にならないような環境や条件が整っているということも分かりました。利用が広まりますように!
2021/02/14(日) 03:24:20 | URL | 東洋人男性 #-[ 編集]
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